
静かな宵です。咲きほころんだ山桜をほんの一枝手折っ
て自作の徳利に活けました。いつものお酒をお燗して
一人お花見と洒落ています。げに贅沢な時間です。
この備前は、ロクロこそ私が挽いたものですが、故正宗悟さんの登り窯で焼い
ていただいたものです。知り合いの方のご紹介で土を譲っていただき、宅配便
でお送りした物を焼いていただきました。当時はまだ徳利が上手く挽けず、今
見ても口が弱弱しい下作ですが、焼きが良くて救われています。肉も薄く挽け
ず、重くて一輪差しにしかなりませんが気に入っている一本です。
正宗さんには生前何度かお目にかかる機会がありました。この徳利を焼いて
もらう前ですが備前にも伺って窯場も見せていただき、色々と教えていただき
ました。飾らない、気さくな印象の方で、訃報にはとても驚いたものです。もう
既にご逝去から7年程が経ちますが、この徳利を見るたびに人なつこい笑顔
が思い起こされます。そういえば体形も備前の芋徳利のような方でした。
備前には染井吉野よりも、山桜が似合うと思います。